部下を持ったら必ず読む「任せ方」の教科書 出口治明著

ライフネット生命のCEOの出川さんの著書です。

 

この本の中では、しっかりと任せる仕組みを作ることが「強い会社」「強い部署」に繋がると述べられています。

 

「任せる仕組み」を作るとどうして会社が強くなるのか。

 

その理由はおもに3点あると述べられています。

 

①経営と業務執行の分離が実現する

ダイバーシティ(多様性)への認識が高まる

③グローバル経済の変化に対応できる

 

まず、①経営と業務執行の分離が実現する についてですが、

マネージャーである上司が部下に仕事を任せられないと、自分でプレーヤーとしての業務も行ってしまいがちです。

しかしその上司自身の時間も限られているので、結果、組織運営であるマネージャー業務も、プレーヤーとしての業務もどっちつかずで中途半端になっていまい、結果として、組織として成果を出せない、ということに繋がります。

そのため、上司自身は仕事を部下に任せて、自分は組織運営であるマネージャー業務に集中することで、効率の良い組織運営ができます。

 

次に、②ダイバーシティ(多様性)への認識が高まる についてですが、

日本企業に比べると、欧米では女性役員の登用に熱心です。

その理由は消費を支えているのは女性という認識があるから、と考えられています。

女性に売るなら女性に、外国人に売るなら外国人に、若者に売るなら若者に任せる。

多様な人材に「任せる」ことで会社は強くなります。

同質性の高い経営チームを構築すると、社会の変化に対応できません。

そのために、これからの企業には多様性への認識を高めて「異質な社員に権限を委譲し、任せる」ことが求められています。

 

最後に、③グローバル経済の変化に対応できる についてですが、

経済のグローバル化により、たくさんの国が市場に参入してきました。

一言でいえば、「ゲームのルールが変わったこと」を意味します。

このような社会の中では、新しい人材に仕事を任せて、これまでと違った戦い方をしなければ勝てなくなってしまうのです。

 

では、どうすれば良い仕事の任せ方ができるのでしょうか。

 

この本の中では、「権限の範囲を明確にした上で、的確な指示を与えること」がポイントと述べられています。

 

権限の範囲というのは、例えば「この資料の中の***のデータが不足しているので、この部分のデータを集めてほしい。」と、権限の範囲がデータ収集に限定されていることを示すことや、「***の資料を作ってほしい。この資料は好きなようにまとめて構わない。」と権限を明確にすることなどです。

 

権限が明確になることで、その権限の中で自分が部長や課長になったつもりで責任感を持って仕事に取り組むことができ、それが仕事の質の向上や社員の成長に繋がります。

 

もう一つの、的確な指示を与えることに関してですが、

指示があいまいでは、任された側に判断の余地が入ってしまい、業務を進めるのが遅れてしまったり、誤解が生じて上司の意図と異なる業務を行ってしまうかもしれません。なので指示は明確に出すことが必要です。

一方で、指示を受ける側も、指示の内容を理解できるまで聞き返す必要があります。

そういった意味で、「明確な指示」というのは双方向のコミュニケーションによって成り立つ、と述べられています。

 

「明確な指示を出すこと」を深堀りして、どんな情報を伝えることが明確といえるのか、という点もこの本の中では述べられています。

ポイントは3点です。

 

①期限を示すこと

「いつまでにやらないといけないのか」という期限を示し、「急いでやる仕事なのか」「ゆっくり時間を掛けていい仕事なのか」を部下に理解してもらうことが大切です。そして、指示を出した後は部下の進捗状況のフォローを入れることも大切です。

 

③目的、背景を示す

目的、背景を説明しておかないと、仕事の全貌が伝わりません。

その場合、言われたことしかできなくなります。例えばデータが見つからなければ、「見つかりませんでした」と報告して終わります。しかし、目的、背景を説明していれば、たとえデータが見つからなくても、「代わりにこのデータが使えるのではないか?」と判断し、動くことができるかもしれません。

そのように部下の創意工夫を引き出すためにも、「目的、背景を示す」ということが大切です。

 

③レベルを示すこと

「完成品」を望んでいるのか「半製品」を望んでいるのか、仕事のレベルを明確に示すことも大切です。

仕事を任せるときには、「時間も部下の能力も有限であること」を忘れてはいけません。

例えば、原稿を依頼する際に、「後で自分が手直しするので、ひとまず下書きを書いてほしい」と伝えるか、「後で手直しはしない」と伝えるかで、部下の時間の掛け方など対応も変わってきます。

業務を効率的に進めるためにも、求めている仕事のレベルを示すことが大切です。

 

本の紹介としては以上ですが、普段自分が業務を進める中で、仕事の任せ方を改善するきっかけになる一冊でした。

また上司から仕事を任される際に、確認すべき内容も知れました。

若手の方にもベテランの方にもおススメの一冊です。